オイル基本知識



エンジンオイル編

エンジンオイル入門 エンジンオイル管理
規格による分類:JASO
日本自動車技術会規格とは、社団法人自動車技術会が制定する自動車・オートバイ部品の工業規格です。英語ではJapanese Automotive Standards Organizationと呼ばれ、頭文字を取ってJASOと呼ばれることが多いです。
一般的にはJASO規格というと、アメリカのSAE規格と同様にエンジンオイルの規格を示すことが多いです。日本は世界的に見てもオートバイのシェアが大きいため、オートバイ向け規格が世界的な規格に先行して制定されることも多いです。

2ストロークオイル
JASOの2ストロークオイル規格は1994年に制定されました。現在までにFAからFDまで4段階存在し、JASO M345試験認証を経て所定の性能を満たしたオイルのみが規格を明記することが許されています。2004年の改訂ではFA規格が廃止され、新たにFD規格が制定されました。
FA 2サイクルエンジンにとって最低限の性能を持っています。現在では規格廃止され、この規格のオイルは市場に存在していません。
FB FAに比べて特に潤滑性、清浄性に優れています。比較的廉価なオイルに多いです。
FC FBに比べてさらに排気煙、排気系閉塞性に優れるスモークレスタイプです。純正オイルはこの規格を満たした物が多いです。
FD FC規格の清浄性をさらにアップして、より環境に配慮したオイルです。ヤマハ発動機製オイルはこの規格を満たしている他、二硫化モリブデンを添加し摩擦係数を下げる工夫も成されています。
オートバイ用4ストロークオイル
JASOのオートバイ用オイル規格はエンジンオイルにおけるAPI規格にて、API SG規格以降の省燃費化・低粘度化に伴う湿式多板クラッチへの不適合が顕著となってきた1998年に制定されました。当初はMAとMBの二つの規格で始まりましたが、2006年に新たにMA1とMA2の規格が追加されて現在に至っています。2006年改訂版ではベースオイルの最低性能が従来のAPI/SE相当からAPI/SG相当に強化され、三元触媒の標準化を見据えてリン含有量の基準(0.08%以上0.12%未満)も定められました。JASO T903: 2006試験認証を経て所定の性能を満たしたオイルのみが規格を明記することが許されています。

4ストロークオイルのJASO規格において、2ストロークオイル規格との最大の相違点は、規格の分類が主に3種類の摩擦特性指数の違いにより行われ、単純な性能の優劣のみで決定されている訳ではない点にあります。そのため、取扱説明書に指定された規格のものを用いることが望ましいとされています。
MA 二輪車に適した4サイクルオイルです。主に内蔵式ギアボックスのマニュアルトランスミッション車に推奨されています。
MB MAに加えて低摩擦特性を持っています。バイク版省燃費オイルとも言えるもので、オートマチックトランスミッションのスクーターや、自動遠心クラッチの小排気量車への利用が推奨されています。
MA1 MAの摩擦特性の範囲内で粘度を低めにしたものです。MA指定車両の中でも小-中排気量に適するとされています。
MA2 MAの摩擦特性の範囲内で粘度を高めにしたものです。MA指定車両の中でも大排気量に適するとされています。
ディーゼルエンジンオイル
JASOのディーゼルエンジン用オイル規格は、ディーゼルエンジンへの排ガス規制や軽油の低硫黄化が強化される傾向が強まった2001年に初めて制定されました。それまで国内ではディーゼルエンジンにはAPI規格で対応していましたが、国内と海外での排ガス規制の違いが大きくなり、またエンジン設計の違いなどもありAPI規格では国内のディーゼルエンジンに対応するのが難しくなっていました。この為、国内ではCG-4以降のAPI規格は国内では使用されず、JASO規格が用いられています。 最初に旧来の排ガス規制前の車種にも対応可能なDH-1規格が制定され、2005年に高度な排ガス対策を行ったディーゼルエンジン向けのDH-2とDL-1が追加制定されました。JASO M355: 2008試験認証を経て所定の性能を満たしたオイルのみが規格を明記することが許されています。
DH-1 高速4サイクルデイーゼルエンジンで、摩擦摩耗および腐食摩耗防止、高温酸化安定性、スス対策、などの性能向上を必要とする厳しい排ガス規制対応エンジンに用いられています。さらに、ピストンデポジット、高温金属表面デポジット、泡の発生、蒸発オイル損失によるオイル消費、せん断粘度低下、オイルシール劣化、等を防止する性能が含まれています。DH-1は、以前の排ガス規制対応のエンジンに使用することも可能であり、またエンジンメーカーのオイル交換距離推奨に従うことを前提に、硫黄分が0.05%を越える軽油を使用する場合にも適用できます。
DH-2 ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)を装着し、新短期以降の規制に適合した新型ヘビーデューティー用ディーゼル車に用いるエンジン油のガイドラインです。JASO DH-1の要求性能に加え、エンジン油中の灰分の規定により、DPFの詰まり寿命を大幅に向上したものです。また、低灰分でありながら酸中和に必要な全塩基価を確保しています。さらに、油中のリン、硫黄含有量の目標値を設定し、環境負荷を低減しています。 主に大型トラックで用いられています。
DL-1 ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)を装着し、新短期以降の規制に適合した新型ライトデューティー用ディーゼル車に用いるエンジン油のガイドラインです。JASO DH-1の要求性能に加え、エンジン油中の灰分の規定により、DPFの詰まり寿命を大幅に向上しています。また、省燃費性を規定し、油中のリン、硫黄含有量の目標値を設定するなど、環境負荷を低減。高温酸化防止性も強化しています。 主に小中型トラック・バス・自動車で用いられています。
オートマチックトランスミッションフルード(ATF)
世界的なATF(自動変速機油)の規格であるゼネラルモーターズのDEXRON規格や、フォード車向け規格であるMERCON規格と同様に、日本車のオートマチックトランスミッションの制御に最適化された規格としてJASO 1A規格が定められています。JASO M315試験認証を経て所定の性能を満たしたオイルのみが規格を明記することが許されており、近年ではJASO M315の改訂に伴い、更に高度なATに対応したJASO 1A02やJASO 1A03などの規格も登場してきています。
しかし、近年の6速以上の多段ATやセミAT、CVTなどでは専用のフルードがトランスミッションと共に同時開発される事例が増えており、このような一般市販される標準規格型フルードは余り用いられないようになっている点は、先行の海外規格と同様です。

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