オイル基本知識



エンジンオイル編

エンジンオイル入門 エンジンオイル管理
マルチグレード&シングルグレードオイルについて
マルチグレードオイル
一般的に使用されているエンジンオイルでは、○○W-●●(例 : 10W-30)のように表示されています。

  • Wは低い数字になるほど低温時の始動性が向上します。下記はあくまでも一般的な目安です。

  • 5w : -35℃程度まで
    10w : -25℃程度まで
    20w : -10℃程度まで

  • 粘度表示は●●の部分で、数字が大きいほど動粘度が高いという意味であって、必ずしも耐熱性が高い訳ではありません。耐熱性は、基油の性能に大きく依存しています。
  • 粘度が高いことだけがエンジンの保護性能を高めている訳ではなく、ベースオイルの基本性能は大きな要素です。
  • 一般的に、マルチグレードの下限(○○Wの数値)と上限(●●の数値)との差が少ないほど、ベースオイルに対して添加剤の割合が少なく、走行による添加剤の消耗・せん断による粘度変化が少ないとされています。
  • エンジンが必要とする粘度は、クリアランスの大きさで決定する場合が多いです。
  • 発熱量の多いエンジンや、フリクションロスを減らす為にクリアランスが大きく取ってあるレース用車両等は、気密性や潤滑性能を維持するため、高粘度(50番以上)ものを使用する場合が多いです。また、総走行距離が多いなどエンジンが摩耗し、クリアランスが大きくなったエンジンには高粘度のエンジンオイルを使用することによって圧縮を維持することが出来ます。逆に、現在の省燃費車はクリアランスが小さく、極低粘度の20番等を使用しています。
  • 粘度が小さい方がオイルの粘性による抵抗が少なくなるので、吹け上がりは良くなり、燃費の向上が見込まれます。しかし、タペット音等の雑音の増加、指定以下の粘度のオイルではエンジンへの悪影響もありますので、注意が必要です。
  • 粘度が大きいものは、高温下でも気密性や潤滑性を維持できます。緩衝性が大きいので、エンジンの静粛性が向上します。オイルの粘性による抵抗が大きくなるので、アクセルレスポンスがやや緩慢になったり、エンジンの発熱が大きくなる場合もあります。
近年の低燃費車では、燃費向上を目的にオイル粘性による抵抗を下げるため、低粘度のオイルが使われています。2002年以降に発売された車種によっては、規格として最も粘度の低い0W-20が推奨されています。2009年には、本田技研工業がさらに規格外に低粘度のエンジンオイルを自社のハイブリッドカー用に開発、発売しました。当初はハイブリッド用となっていましたが、現在ではHV車以外の車両でも指定されています。逆に夏場は5W-30などの粘度の高い(硬い)オイルを入れたほうが良いと言われています。ただし、このような近年の低燃費エンジン自体、低粘度オイル(0W-20等)を使用することを前提に設計開発されており、それ以外のエンジンに低粘度オイルを入れるとエンジンに悪影響を与えてしまいます。

基本的にメーカーが指定する粘度を大きく変えないことが必要です。特に、指定よりも低い粘度(特に高温側)の使用は避けるべきです。高温側粘度を多少上げる(5W-30→5W-40にする等)ことは多少燃費の悪化にはつながりますが、加速がよくなり、エンジンのパーフォマンスの余裕が実現します。しかし、指定よりも低い粘度のオイルでは、潤滑性や気密性を維持することが出来ず、騒音の増加やエンジンの性能を損なわせたりするばかりか、ギアやピストンなどエンジン内部の摩耗を促進したり、高負荷時には潤滑膜が保持できず金属接触が発生し焼き付きを起こすなど、故障につながる危険性があります。

シングルグレード
主にシングルグレードと呼ばれていますが、モノグレードと呼ばれる場合もあります。

  • 単一の粘度を持つエンジンオイルです。
  • 気温の変化が殆ど無い地域やドラッグレース、工業用など、ごく限られた条件下で使用されるエンジンに使われています。
  • 粘度変化がマルチグレードより少ないです。
  • シングルグレード指定の車両(主に旧車)にマルチグレードのオイルを使用すると、オイル漏れを起こしたり、オイル上がりやオイル下がりなどの不具合が発生することがあります。これは当時、マルチグレードのエンジンオイルがなかったため、シングルグレードのエンジンオイル専用のエンジン設計になっているからです。

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