オイル基本知識



エンジンオイル編

エンジンオイル入門 エンジンオイル管理
エンジンオイルの役割
エンジンオイルには、主に以下のような作用があります。

●潤滑
●冷却
●気密保持
●清浄分散
●防錆防食

潤滑
自動車の殆どに搭載されているレシプロエンジンでは、金属製のシリンダー内をピストンが毎分数千回上下する他、クランクメタルやカムなど、金属同士がこすれ合うによる摩擦によって、金属の磨耗や発熱を生じます。それらを流体潤滑作用・弾性潤滑作用・境界潤滑作用により、摩擦を軽減し、エンジン内各部を潤滑するのが、エンジンオイルの重要な作用です。ロータリーエンジンも、金属製のハウジング内をローターが高速回転する為に、レシプロエンジンと同様に潤滑が必要であります。

冷却
エンジンオイルがエンジン内各部を通る際に、エンジンで発生した熱を奪うことでエンジンを冷却するのも重要な作用です。オイルに蓄えられた熱は、空冷式や水冷式のオイルクーラー、あるいはオイルパン(オイル溜り)等で冷却され、冷えたオイルはオイルポンプによりまたエンジン各部へ送られます。
エンジンオイルによる冷却作用は、空冷エンジンだけでなく水冷エンジンでも重要です。エンジンの構造上冷却水を循環させられない箇所も多く、そういった箇所の冷却は水冷エンジンでもエンジンオイルの冷却作用に頼るしかないからです。また、オイルの冷却作用を空冷エンジンよりも更に積極的に利用した油冷エンジンというものも存在します。
ターボチャージャー付きのエンジンの場合、タービンハウジング(タービンを覆う容器)は排気温度(摂氏700度以上)により熱せられ、赤く発光する程ですが、そのタービンシャフトの保持(ボールベアリングなどを使わない油膜によるフローティング軸受け)や冷却もエンジンオイルに頼っています。特にタービンの軸受けへのオイル供給が停止されると、高温の金属同士が直接摩擦することで生じる焼きつきという現象が起こり、タービンが破損します。そのために水冷式軸受けを持つものを除いたターボエンジン搭載車には、「高速走行直後はしばらくの間エンジンを止めないで下さい」といった内容の注意書きがあります。

気密
シリンダーとピストンは完全に密着している訳ではなく、ピストンが運動できるようにごくわずかな隙間があります。この隙間に入り込んで両者を潤滑するとともに気密性を保持するのも、エンジンオイルの重要な作用です。エンジンオイルはそれらの表面に液体の膜(油膜)を形成します。
もし、この油膜の保持が不十分であればシリンダーに取り込まれた気体が燃焼室から漏れてしまい、正しい燃焼ができなくなります。また、点火した後に膨張した燃焼ガスも同様に漏れてしまい(ブローバイガス)、本来の出力を得ることができなくなります。シリンダーとピストンの間隙は使用するに従い、徐々に増加するため、古いエンジンにとってこの役割はより重要です。

清浄分散
エンジンが稼動すると、その過程で様々な化合物やスラッジ等の「汚れ」が発生します。これらの汚れがエンジン内に溜まると、故障の原因となったり、エンジンの寿命を短くする一因となります。これをできるだけ防ぐ為に、エンジン内に発生した汚れを取り除いてできるだけエンジン内を清浄に保ったり、取り除いた汚れを自らの中に取り込んで特定の箇所に溜まらないように分散させるのも、エンジンオイルの重要な作用の1つです。
こういった作用を持つ為に、4ストロークガソリンエンジン用エンジンオイルではオイルが使用経過と共に黒っぽく汚れていくのは、限度はあるものの正常と言えます。それだけエンジン内の汚れをオイル内に取り込んでいる結果だからです。ただし汚れを取り除いたり取り込んだりする能力には限界がある為に、一定期間ごとに交換する必要がある理由の1つにもなっています。なお、ディーゼルエンジンでは交換直後から真っ黒に汚れてしまう場合がありますが、これは燃料や燃焼の仕組みの違いにも起因しており、必ずしも不調や故障が原因ではありません。
また、給気によって燃焼室に入り込んだ粉塵を洗浄する役割もあります。エアフィルターを通して吸気していますが、フィルターよりも細かい物質は通り抜けます。粉塵の中には硬質のものもあり、それらを洗い流し、また、粉塵と金属との摩擦を低減させる作用があります。

▲このページのトップへ移動します