オイル基本知識



エンジンオイル編

エンジンオイル入門 エンジンオイル管理
ベースオイル(基油)による分類
エンジンオイルはベースオイルの製法などにより次のように分類されています。

鉱物油(ミネラルオイル)
石油を精製する過程で得られるものです。分子量などは厳密にそろえることができませんが、比較的安価に製造でき、一般的にはこれが多用されています。原油にはナフテン系とパラフィン系があり、製品となるエンジンオイルは全てパラフィン系オイルになります。ナフテン系のエンジンオイルはないです。パラフィン系原油とパラフィン系潤滑油と混同してはなりません。また、鉱物油を原料として高度水素化分解(ハイドロクラッキング)した物を化学合成油(粘度指数が145のも実現。一般にVHVI油と呼ばれるもの)としていますが、本来の合成油とするか論議は分かれています。日本、アメリカ、韓国、シンガポール、中近東など多くの国々では化学合成油として扱うことが多いですが、欧州では化学合成油として認められていません。しかし、性能的にはPAO等の性能に近く、また比較的安価に出来る事から最近利用が圧倒的に多いのは間違いありません。

部分合成油(セミシンセティック、パートシンセティック、シンセティックブレンド)
鉱物油や高度水素分解油にPAOやエステル、あるいは水素化分解油を混合し、品質を高めたものです。その配合率や基油は日本では規定がなく、表示義務もないため、その詳細は消費者側には不明な場合が多いです。高品質な性能を安価に提供できるため、全世界で多用されています。

化学合成油(シンセティック)
PAO(ポリアルファオレフィン)は石油からナフサを分留し、エチレンとし化学的に分解・合成し直して、成分や分子量を一定にしたもので、製造コストが高いですが、性状を比較的自由に設定でき、せん断安定性に優れています。 エステルはポリオールエステル、ジエステル、コンプレックスエステルなどがあり、動植物の脂肪酸とアルコールを化合して生成されています。エステル結合部分のカルボニル基が極性を持ち、特にその酸素原子にある-δ(負の極性)は、オイル自身を金属表面に吸着させる効果があります。しかし、コストが高く、寿命も短い傾向のため一般的ではありません。
エステル系とPAO系はともに化学合成油ですが、化学的安定性や粘度抵抗などに大きな違いがあり全く別の性質を持っています。一般的には化学的安定性の非常に高いPAOに粘度抵抗の小さいエステル系を一部混ぜ合わせたものを基油として用いることが多いですが、サーキット走行用に100%エステル系を使用したオイルも存在しています。 アメリカの広告審議会 (NAD) の採決により、高温高圧下で水素、触媒を用いてワックスや石油重質分を分解・異性化精製する、ハイドロクラッキングオイル(高度精製油、高粘度指数油、超精製油とも表記されています。商品目ではVHVI、MCなどがあります)も化学合成油(シンセティック)として表示されるのは最近一般的になりましたが、化学合成油の元々の定義から厳密に言えば、VHVIは化学合成油ではありません。

APIによるベースオイルの分類

グループT
溶剤精製された鉱物油(ミネラル 石油系炭化水素)
粘度指数 (VI) : 80 - 120
飽和炭化水素分 (Vol.%) : <90
硫黄分 (MASS%) : >0.03

グループU
水素化処理精製鉱物油(ミネラル 石油系炭化水素)
粘度指数 (VI) : 80 - 120
飽和炭化水素分 (Vol.%) : ≧90
硫黄分 (MASS%) : ≦0.03

グループV
(ミネラル/シンセティック 石油系炭化水素)
高度水素分解精製された高粘度指数鉱物油(近年化学合成油と表示されることが多いです。ワックス水添異性化分解された基油もここに属しています)
粘度指数 (VI) : ≧120
飽和炭化水素分 (Vol.%) : ≧90
硫黄分 (MASS%) : ≦0.03

グループW
(シンセティック 合成炭化水素)
PAO(ポリアルファオレフィン・オレフィンオリゴマー)
粘度指数 (VI) : 120 - 140前後
粘度指数は製品によって大きく異なっています。また粘度が高いほど粘度指数は高くなり、一部の特殊グレードでは300を超えるものも存在しています。ただし、高粘度なものはエンジンオイルのベースとして使用するには粘度が高すぎるため、エンジンオイルにおいては粘度調整や添加剤としてブレンドされる程度であり、配合量は多くはなりません。ベースに使用される一般的な低粘度グレードでは粘度指数は極端に高くなることはありません。

グループX
グループT - W以外の基油です。エステル系(ジエステル、ポリオールエステル、コンプレックスエステル)の他、アルキルナフタレン、植物油もこのグループに含まれています。グループT - W以外の全てが該当するため性質は様々です。エンジンオイルでは主にエステル系が用いられる為、エンジンオイルにおいてグループVと言えばエステルを指すことが多いです。エステルは設計の自由度が高く様々な仕様のものが製造出来るため粘度指数などはPAO以上に差が生じています。競技用や特殊な例を除けばベースにエステルのみを使用することは少なく、通常では他のベースオイルとブレンドして使用するなど、添加剤に近い使われ方をしている場合が殆どです。エステルは強い極性を持つためその他の添加剤の働きを阻害することがあり、エステル表記があるオイルでも全体から見た配合量はさほど多くないことが多いです。基油にエステルのみを使用するケースや多量に配合するケースにおいては、使用するエステルの特性に合わせた添加剤の処方が求められています。

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